トランスパレント・レッド・オキサイドは、「素晴らしい!」と感嘆の声をあげたくなる色です。「絶世の美女」という言葉をもし色に使うことができるのならば、この言葉がぴったりの色です。トランスパレント・レッド・オキサイドのマストーンは、とてもリッチでバーント・シェンナのようですが、赤みが強く茶色の色味は、バーント・シェンナに比べて少なくなります。しかし、この色の本当の魅力はアンダートーン(下色)にあります。これは輝かしいオレンジ・レッドで、すべてのアース・カラーの中で最も美しい、と言えるのではないでしょうか。この美しさは透明度から来ています。この純度の自然なレッド・オキサイドの顔料で、このような透明度を出す事は、今までには不可能な事でした。透明度は、顔料の粒子サイズに左右されます。赤が作られる製造段階では、通常色が濃くなるにつれて、粒子のサイズは徐々に拡大していきます。そのため、特別な方法で正確な色ができるまでの行程中に、この粒子のサイズを小さいまま保たなければなりません。この方法が研究されたのは、車産業の色開発の中で、何年もの間直射日光に耐えられる耐光性に最も優れた新しい色の必要性からでした。アーティストたちが美しい顔料を使いたいと願っていても、顔料の産業の中では、アーティスト用の絵の具は非常に小さな一部分の産業でしかありません。印刷産業、建築用絵の具、プラスチック産業、繊維産業、そして車産業と顔料を使用する産業が19世紀半ばから拡大されていきました。しかしそのおかげで、トランスパレント・レッド・オキサイドなどの素晴らしい顔料の研究開発に多大な資金がつぎ込まれたのですから、文句は言えません。

トランスパレント・レッド・オキサイドは、バーント・シェンナの代わりにもなる完璧な色相ですが、十分に違いのある2色ですので、両方あることが望ましいとされます。バーント・シェンナには、とても綺麗なトランスパレント・レッド・オキサイドの輝きはありませんが、広い範囲を魅力的な茶色系のマストーンで塗る風景画などに役に立ちます。ただ、白いキャンバスに混色をせずに2色を塗って比べると、違いは明白です。バーント・シェンナに比べて、アンダートーンは明るくクリーンにそして本当のオレンジ・レッドの下色を持っています。例えば、チタン・ホワイトやアンブリーチ・チタンなどの不透明色との混色では、バーント・シェンナに似た作用になりますが、透明度の高い顔料、例えば、プライマリー・レッドなどと混ぜると、とてもクリーンで透明度の高い、まるで宝石のような色のアンダートーンが作れます。アーティストは美しい色に惹かれがちですが、トランスパレント・レッド・オキサイドは、綺麗な顔を持っているだけではありません。バーント・シェンナのように肌の色を作る混色に使うと、温かみのある優しい色を作り出し、風景画でアース・カラーの混色の際も、それらの色を和らげる効果があります。グリーンを柔らかくする時には、透明度の高い、マティス・エメラルドやフタロ・グリーンと混ぜると、このトランスパレント・レッド・オキサイドが持つ透明度が良く働き、とても美しく保存性の高い色が作れます。